15th Nov

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多彩かつ高次元な
スパイス文化

ジブリ学術ライブラリー
「人間は何を食べてきたか 第3巻 アジア・豊かなる食の世界1」
1990年/NHK

人間の食のルーツをたどるNHKスペシャルのシリーズ「人間は何を食べてきたか」。南アジアくくりだけで紹介するには勿体ないくらいとても面白い、食と人間のドキュメンタリー全8巻です。
 第3巻(と4巻)はアジアがテーマで、そのうち第2話のテーマはカレー。収録では南インドの食事とターメリックの収穫、ダッバーワーラーの話題、北インドの食事などが出てきます。映像で比べるとインドの北と南の風景はずいぶん違いますね。スパイスの調合器具や、食器、食べ方等の地域差は、もともと知っていた事柄でもその風景と同時に動く映像で見比べると南北インドの空気の違いがよく感じられます。太陽の恵み多い開放的な南、内向的で砂礫の風景だけど理知的な北といった空気でしょうか。パンジャーブ地方のカレーは小麦粉を入れてとろみを出しているようで、同様の作りの日本や欧風のカレーのルーツは北インドのカレーなのではと想像をかき立てられます。カレーがテーマだからしょうがないですが、料理名が全部カレーという説明はちょっと残念。
 この第3巻はカレーの他に「麺」と「芋(タロイモ/ヤムイモ)」がテーマの回が収録されていてこれがまた非常に興味深いです。第1話は麺の話。中国の黄土地帯で消化の良くない穀物の消化を促進させるために発明された形が麺のルーツ。エリアも食べ方もさまざまですが、インドはじめ南アジアではあまり見かけませんよね。なぜでしょう。現代はチョウミン(インド味の焼きそばみたいなもの)がありますけどね。
第2話、芋のテーマでは元々は毒があって食べられなかったタロイモの食べ方を工夫する我々の先祖の発想にも敬服します。
「麺」「カレー」「芋」とアジアの食を眺めてみると、カロリーを摂取する方法に苦心している他のエリアに比べ、カロリー以上の滋養を求め、味や香りも追求したスパイスが特色というカレー文化は少し次元が高い恵まれた食文化のように見えます。
 このドキュメンタリーを見たら、人間の古代の英知に感動し、ますますありがたく南アジアの料理をいただくことになりそうですね! (でももっと深いカレードキュメンタリーみたいですよね!)
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(西村淳一)