世界最大級のインドイベント、ナマステインディアが予定通り代々木公園で開催されることになった。私もオリッシーを奉納する。
「出るの?」
「いや、出るでしょ!」
「正気じゃないよ?」
「いやいや、出ないなんて大袈裟!」
「いやいやいや…」
様々な声が聞こえてくる。
代々木公園と言えば、お花見にピクニック、スポーツ、音楽、ダンス…動物も人間もすっぽり緑に包まれる、都会のオアシス。ナマステインディアはじめ、各種イベントも楽しい憩いの場だ。それが今ではデング熱の代名詞のようになってしまった。
例年、たくさんの飲食や物販の出店があり、ステージパフォーマンスも豪華で人出も多く、たいそう賑やかな2日間となるナマステインディア。決行の知らせを受け、出店者や出演者だけでなく、出掛けるのを楽しみにしていた方々も多少なりとも心揺さぶられたことだろう。インド舞踊家にとっては憧れの舞台の1つでもあり、ここに立つため、東京だけでなく、日本はおろか、世界からダンサーが集う。ほんの20分のために、いつかは、来年こそは、と夢見るステージ。それを出演か、辞退か、いずれにしても厳しい決断を迫られることになった。それぞれの決意に至った背景を大切にしなければいけないと思う。私の師は出演を決め、祈るようにタヒアを制作していた。タヒアとは、オリッシーの装身具で、中でも頭頂部を飾るパーツは「お寺様」としてとても大切な、オリッシーダンサーの命同様のもの。
私は師の決断に従うことに決めた。
それでも色々考える。これからも考える。
でも、踊る時はただただ捧げるのみだ。
9月21日(日)18:00~18:20
安延佳珠子インド舞踊スタジオ “Studio Odissi”
頭には師特製のお寺様。
透明な踊り子になる。
(橘田妙子)